ラスモルタル外壁の地震によるひび割れ発生状況やはく落安全性および構造性能の影響について、実物外壁の試験体を作成し水平加力試験を行い確認した。
ラスモルタル外壁の構成は、直張り構法や通気層を設けた単層下地通気構法と二層下地通気構法とがあり、試験体は近畿メタルラス工業組合が推奨する二層下地通気構法の仕様とした
NO | ラス網 | 胴縁 | 下地材 | 防水紙 | ステープル | モルタル |
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1 | JIS A5505 波形ラス W700-06 |
スギ:幅45 厚さ15mm |
構造用合板 厚さ9mm |
JIS A6005 アスファルトフェルト430 |
JIS A5556 1019J 止め付けピッチ 縦横100mmピッチ |
既調合 軽量 モルタル 厚さ 15mm |
2 | ラス下地板 スギ:12X80mm 目透し18~20mm |
波形ラス張り
モルタル仕上げ
水平加力試験装置
下記試験仕様において、1/120radで著しい損傷は見られませんでした。1/30rad以降ではステープルの引き抜けや開口部四隅よりひび割れ幅が広がるのが見られました。しかしながら、モルタルの剥落は無く1/10radでさえも剥落はありませんでした。
*1/120radは「損傷限界変形角」とも呼ばれ、稀に発生する地震(震度5程度の中地震)に対して部材の補修などの大きな損傷を受けることが無い。
rad(ラジアン)について
各層間変形角の3回(1/450~1/30rad)および1回(1/20~1/15rad)繰返し後にひび割れの発生状況を観察し、表1に試験時の最大荷重を図1、図2に荷重と相関変形角の関係を示す。
試験体No. | 最大荷重時 | |
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荷重 (kN) |
変形角γ (rad) |
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1:波形ラス W700-06/構造用合板/ネットなし | 19.7 | 0.0627 |
2:波形ラス W700-06/ラス下地板/ネットなし | 12.2 | 0.0200 |
表2に示すように各試験体の層間変形角1/120rad変形後の荷重0の状態において、最大ひび割れ幅は1.5mmであったが、全体的な傾向として、1.0mm以下のひび割れ幅であった。
No. | 開口部(最大ひび割れ幅:mm) | |||
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左下隅部 | 左上隅部 | 右下隅部 | 右上隅部 | |
1 | 引:-、押:3.5 荷重0:1.5 |
引:4.0、押:- 荷重0:0.4 |
引:0.04、押:- 荷重0:- |
引:-、押:1.3 荷重0:0.7 |
2 | 引:-、押:1.3 荷重0:0.6 |
引:0.8、押:- 荷重0:0.1 |
引:0.08、押:- 荷重0:- |
引:-、押:1.3 荷重0:0.5 |
実験では、構造計算で求められる変位以上に行った結果、基準通りに施工されたラスモルタル外壁は剥落が有りませんでした。
以下に試験状況写真を掲載します。